実際に1人サロンを開業した人の物件探しの体験談が聞きたい!
女性1人で不動産屋に行ってもちゃんと対応してくれるのかな?
こんにちは、元1人美容室オーナーのやぶきまゆこです。
今回はこのようなお悩みをお持ちの方に、「女性の1人サロン・個人店開業における物件探しの実例体験談」を紹介していきます。
この記事の内容
この記事を書いているのは
■ 都内で8年間1人美容室を経営
■ 顧客0の土地で開業、4年後には予約の取れない美容室に
■ 集客⇒主に自作ホームページ、ブログ、店前チラシ
私は、都内に顧客0の土地で開業し、「1ヶ月前にすべての予約が埋まる1人美容室」を8年間経営していました。
「実際に開業した人の物件探しの体験談が聞きたい」という1人サロン開業準備中の方、これから個人店舗の開業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
それではさっそく紹介していきます。
女性の1人サロン・個人店の開業、物件探し体験談(準備編)
私は10年前、板橋区大山に1人美容室を開業しました。初めての物件探しは不安だらけでしたが、当時自分なりに行った「物件探しの準備」についてご紹介していきます。
希望する物件の条件を書き出した
まずは自分が開業する1人サロンの物件について、これは譲れないという条件を以下のようにノートに書き出しました。
・「池袋駅から各路線3駅以内」かつ「サロン最寄り駅から徒歩5分以内」であること
・バリアフリーにしたかったので「1階の物件」であること
・イメージ通りの内装にしたかったので、「スケルトン物件」であること
・物件の広さは「10〜15坪ぐらい」(人からの助言でこの時点では1人or2人体制でやるかまだ迷っていました)
この中でも一番重要としていたのはサロンへのアクセスでした。
縁もゆかりもないエリアで0から開業するため、前会社でのお客様はすべて引き継いできましたが、どうしてもという方が来店しやすいようにアクセスしやすい場所での開業は必須と考えていました。
また上にも書いたように私自身は1人美容室が希望だったのですが、当時は今ほど女性の1人開業が盛んではなかったため、周りから「1人なんて無理だから誰か雇ったほうがいい」と言われていました。
私自身も初めてのことですし、周囲からの助言で心がゆれており、正直この時点では2人体制での営業も想定していました。
開業予定エリアで行った3つの調査
物件への条件を書き出したら、さっそく開業予定エリアの調査に入りました。
行ったのは次の3つ。
① 各エリアの人口分布を調べた
- 開業予定エリアの候補地である豊島区役所と板橋区役所に足を運び、区内の「人工分布図」をコピーさせてもらった
- 美容室の開業支援相談を無料で行っているタカラベルモントという美容メーカーに出向き、「候補駅の乗降者数データ」などを入手した
人口分布図や駅の乗降者数データにはたくさんの開業のヒントが詰まっています。
特に乗降者数と昼間の人工分布図を照らし合わせると、そのエリアには住んでいる人が多いのか通勤や通学で通ってきている人が多いのかなどが一目瞭然です。
これは自分の開業するサロンや個人店のターゲット層がそのエリアにいるかを検討するうえで、かなり役立ちました。
② 不動産情報サイトで物件を検索した
開業予定エリアの店舗物件賃貸情報を、ネット上のいろいろな不動産情報サイトで検索しました。
そこで候補エリアや候補駅を絞って検索することで次のような情報が得られました。
・各エリアの店舗物件の「賃料の相場」
・開業予定エリアの物件を扱っている「主要な不動産会社」
私が開業した頃は、まだ不動産会社のホームページにもすべての物件情報が掲載されていない時代でした。
ただ、開業予定エリアの物件相場と自分の希望条件にどれだけ相違があるのかを知る意味では、ネット検索はお手軽でよかったと思います。
③ 候補駅10駅の周辺をくまなく歩いた
1人で開業するなら街との相性もとても大切だと思っていたので、候補駅である山手線、有楽町線、東武東上線、都営三田線などの候補駅10駅周辺をくまなく歩き回りました。
各駅1〜2時間ぐらい歩き回り、チェックしたのは次の3つです。
- マンションや商業施設など「建設中の工事現場」(いつどんなターゲット層の人口が増える見込みか知れる)
- 一軒家やマンションの築年数などの「住宅状況」(そのエリアに人口が増えるのか頭打ちなのかの予測が立つ)
- 道路ごとの人通りや動く方向など「人々の導線」(開業後のイメージが湧くかどうかが分かる)
特に私が実際に開業した板橋区大山駅周辺には、ファミリー向けの新築マンションが多数建設中だったので、今後確実にターゲットにしている30代・40代の人口が増えるなと確信できました。
このように自分の足で候補駅すべてを歩き回り、最終的に自分の開業する1人サロンのターゲット層に合う、東武東上線「下板橋駅」「大山駅」、都営三田線「新板橋駅」「板橋区役所前駅」の4つにしぼりこみました。
不動産屋回りで感じた女性1人開業者への風当たり
候補駅4つにしぼりこんだ後、目星をつけた4軒の不動産屋を直接訪問したわけですが、なんとまともに取り合ってくれたのはそのうちの1軒だけでした。
当時はまだ女性の1人開業というケースは今ほど一般的ではなく、私の体感としては正直「なめられてるな」と感じる対応の数々でした。
1軒は昔からあるような小さな不動産屋で入ってすぐに門前払い。あとの2軒は「今はそのような物件はない」ということだったので「新しく情報が入ったら連絡がほしい」と伝えましたが、連絡が来ることはありませんでした。
厳しい現実をつきつけられ正直落ち込むこともありましたが、そんな中でも親身に対応してくれたのが女性スタッフのいる不動産屋でした。
細かく要望を聞いて随時物件情報を送ってくれたり、内見予約もスムーズに対応してくれたため、最後までこちらでお世話になることに決めました。
物件探しのポイントや注意点についてはこちらの記事で解説していますので、よろしければ参考になさってください。
女性の1人サロン・個人店の開業、物件探し体験談(決定〜契約編)
続いて内見〜契約までの流れをご紹介していきます。
① 内見スタート
開業予定候補駅を4駅にしぼりこみいよいよ内見スタート、物件が出てこなかったらどうしようと不安を抱えながら、長期戦になる覚悟もしていました。
ですが、わずか4軒目で理想の物件と出会ってしまいました。
「半年以上決まらない」「決まりそうになったけど白紙になった」なんて話もよく聞きますので、本当に運がよかったと思います。
ちなみに却下した3軒の物件はこんな感じでした。
・1軒目(板橋区役所前駅)→人通りは多かったが中2階の階段物件でバリアフリーにできないため却下
・2軒目(新板橋駅)→築浅タワーマンション1階部分、国道沿いで騒がしいためサロンコンセプトに合わず却下
・3軒目(大山駅)→2〜3人営業向きの広さで正直心がゆれたが、1人サロンの希望を捨てきれず却下
② ワクワクする物件に決定
そんな中4軒目に内見した物件では入り口に立った瞬間からピンときて、中に入ると自分がここで仕事をしているイメージが自然と浮かびました。
さらにその内見からの帰り道、「ワクワクドキドキ」という胸の高鳴りがずっとおさまらなかったのです。
こんな体験は生まれて初めてで、「ここしかない!」と思いました。
というのも、私が開業前まで勤めていた会社の社長にもらっていたあるアドバイスがあったからです。
ワクワクする物件じゃなきゃダメだよ。そうじゃないならうまくいかないからやめておきなさい。
当時は「本当かな(笑)」と思いながら聞いていたのですが、まさに嘘のような本当の話を実感した瞬間でした。
さすが40年以上、東京下町で美容室経営を続けている人の言葉は重かったです。
こうして「大山駅徒歩2分、1階と地下1階合わせて15坪スケルトン、家賃160,000円/月」の物件に決めたのでした。
③ 家賃交渉〜契約まで
⑴ 仲介不動産から物件の申し込み・賃料減額交渉のお願い
まずは物件を紹介してもらった不動産屋から大家さんに物件の申込みをおこない、同時に月額家賃の減額交渉をお願いすることにしました。
というのも、理想的な物件ではありましたが固定費となる家賃が高いのが気になりました。
「物件がとても気に入った」ということを最大にアピールしてもらい、丁重に減額交渉を進めてもらった結果「月額家賃140,000円」に下げてもらうことができました。
⑵ 融資の申し込みのため契約費用の見積もりを出してもらう
日本政策金融公庫に融資を申し込むため、物件取得にかかる契約費用の見積もりを出してもらいました。
⑶ 融資の申し込み
出してもらった見積もりを盛り込んだ金額で融資を申し込み、担当者との面談後審査結果を待ちました。
⑷ 融資決定、契約手続き時に感じた女性1人開業者への懸念
公庫からの融資が決定し、仲介会社、物件管理会社、大家さん、私の4者で契約手続きを行いました。
手続き自体はスムーズに進みましたが、その際大家さんから「今後結婚や出産するときには店はどうするつもりでいるのか」と聞かれました。
私は「もちろん続けるのでその準備もするつもりです」とお答えしましたが、「女性の1人開業ってこういう心配されるんだな」と女性1人開業の壁を妙に実感してしまいました。
こうして私の物件探しは「物件探し〜契約までわずか1か月半」というスピード展開で幕を終え、開業への大きな一歩を踏み出すこととなったのでした。
女性の1人サロン・個人店の物件探し体験談、唯一の反省点
売り上げを生まないデッドスペース
私が借りた物件は「1階(7.5坪)+地下1階(7.5坪)」で、地下は閉店までバックルームで使用、実際にサロンとして売り上げを生んでいたのは1階部分のみでした。
つまり15坪に対し月額14万円の家賃を払うのであれば、本来バックルームなどを除く13〜14坪部分で売り上げを作らなければ利益が生まれない計算になります。
実はこれ、前会社社長に言われていたことでもありました。
その構造じゃ地下で売上げが生まれないじゃない。だったら家賃としては高すぎるしムダが多い物件だよ。
開業前、私にはこの経営者目線がすっかり抜けていました、というか完全に勉強不足でした。
自分が健康に働けていたうちは、この高すぎる固定費のことは考えなくてもよいぐらい順調でしたが、首のヘルニアになり営業日数を減らさなければなくなった閉店前2年間は、この件を痛いほど実感させられる毎日でした。
今の私ならこうする、改善点2つ
すべてをふまえた上で、今の私が「もし当時の開業をもう一度やり直すとしたら」という視点で、改善点を2つあげておきます。
① 人の意見に左右されず、自分が最初からやりたかった1人営業に適した広さの物件にしぼって探す
開業当初は人からのアドバイスなどもあり、「いずれは地下でネイルやまつげエクステ始めるかも」「1席増やすかも」などと考えていました。
しかし結局最後まで1人営業だったので、今の私ならやはり「最初からブレずに自分のやりたい営業形態に合った物件を探す」と思います。
② 物件自体は気に入っていたので、「15坪家賃月額14万円」分の利益を生み出す方法を最初から考えて開業する
ただ今考えても、やはりあれ以上の物件には出会えていなかっただろうというぐらい、物件選びにはまったく後悔がありません。
ということは「地下のデッドスペースを使って売り上げを作り出す方法」を開業2、3年目からスタートできるよう開業時から準備しておく、今の私ならそうするかなと思います。
まとめ:初めての物件探しは学びだらけだった
私の「物件探し体験談」は参考になったでしょうか?初めての開業に物件探し、本当にいろいろなことを考え、感じ、学べた体験でした。
特に物件探しは「いかに他人の意見に左右されず自分で決めていけるか」がカギだったなと思います。
たとえ後で「もっとこうすればよかった」と思ったとしても、自分で決めたことであれば後悔しながらもそれ自体が学びとなり、今後の糧になりますからね。
これから1人サロンや個人店開業の物件探しをする方にとって、私のこの体験談が少しでも参考になれば幸いです。